ワーグナー タンホイザー序曲

これからいつくかの日記は、鑑賞会用の解説です。

リヒャルト・ワーグナー作曲

楽劇「タンホイザー」序曲

クラウス・テンシュテット指揮

ベルリン・。フィルハーモニー管弦楽団

かんち自身の解説

ワーグナーと言えば、楽劇の創始者として有名ですが、最初から楽劇だったわけではありません。

このタンホイザーは、楽劇とも、歌劇とも言われます。今回は楽劇と付けましたが、正確には限りなく歌劇と言うべき作品です。

このタンホイザーが楽劇とも言われるゆえんは、パリ版の存在です。パリ版は序曲が始まってそのままバレエが入り、音楽が引き続いて第1幕へと入っていきます。しかし、本来の版(ドレスデン版)は、歌劇的に、序曲が演奏されて、一旦音楽が途切れた後、第1幕へと入っていくのです。

この序曲はそのドレスデン版のもので、単独でもよく演奏されるものです。そしてこの序曲だけでも、本来タンホイザーという作品が持つエロティシズムが十分味わえるかと思います。

出来れば、パリ版も見ていただくと、そのエロティシズムがよく分かるかと思います。

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タンホイザー』(Tannhuser)WWV.70は、リヒャルト・ワーグナーが作曲した、全3幕で構成されるオペラ。正式な名称は『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(Tannhuser und der Sngerkrieg auf Wartburg)であるが、一般的には前者の題名で知られている。序曲、第2幕のエリザベートのアリア・「大行進曲」、第3幕のヴォルフラムのアリア「夕星の歌」は、独立してよく演奏される。

ワーグナーが5番目に完成させたオペラ(未完の『婚礼』を除く)で、ワーグナー作品目録では70番目(WWV.70)にあたる。副題に『3幕からなるロマン的オペラ』(Romantische Oper in 3 Aufzgen)という題が与えられている。

前作『さまよえるオランダ人』の持つ番号形式を本作ではこれを脱却し、またワーグナー自身の言う「移行の技法」が随所に巧みに用いられていることが特徴である。

舞台は13世紀初頭、テューリンゲンのヴァルトブルク城

タンホイザー』が着想されたのは1842年(29歳)に遡る。当時ワーグナーは同年の4月にパリからドイツへ帰郷しており、ドイツのドレスデンで『リエンツィ』と『さまよえるオランダ人』の上演の機会を探していたが、この時期からすでに『タンホイザー』の散文の草稿を着手していたとされる。

1842年6月にワーグナーは場所を移して、ボヘミアの山岳地帯のアウシヒにて散文の草稿を仕上げる作業を6月28日から7月6日にかけて行い、宮廷歌劇場の指揮者としての仕事もあったため一時中断をしたが、翌1843年5月22日に散文の草稿を韻文化した。また韻文化した草稿に音楽を付加するための小スケッチ類を多く書いたのち、夏にテプリッツに場所を移して、1843年初秋に作曲に着手した。第1幕は11月にテプリッツで、第2幕は翌1844年10月15日にドレスデンで、第3幕は12月29日に、序曲は1845年1月11日にそれぞれ作曲を終わらせ、4月13日に全体の総譜を完成させた。

なお当初『ヴェーヌスベルク』という仮題をつけていたが、知り合いの医師からの助言で現在のタイトルに改題している。

中世のドイツでは、吟遊詩人としてうたう習慣が騎士たちの中でもあった。騎士の1人であるタンホイザーは、テューリンゲンの領主の親族にあたるエリーザベトと清き愛で結ばれていたが、ふとしたことから官能の愛を望むようになり、愛欲の女神ヴェーヌスが棲んでいるという異界ヴェーヌスベルクに赴き、そこで肉欲の世界に溺れていた。

第1幕

ヴェーヌスベルクで快楽の日々を送っていたタンホイザーだったが、ある時夢の中で故郷を思い出し、ヴェーヌスベルクから離れようと決心する。ヴェーヌスは彼を引き止めようと誘惑するが、タンホイザーは強い意志によってそれを退け、ヴェーヌスベルクを消滅させる。

異界から脱出したタンホイザーヴァルトブルク城近くの谷に放り出される。そこに領主のヘルマンや親友のヴォルフラムらが通りかかる。ヴォルフラムもまたヴァルトブルク城の騎士である。領主やヴォルフラムは出奔していたタンホイザーが帰ってきたことを喜び、再びヴァルトブルク城に戻るよう勧めるが、官能の世界に溺れた罪の重さを思ったタンホイザーはそれを拒否する。しかしヴォルフラムはエリーザベトが彼の帰りをずっと待っていると説得し、タンホイザーはヴァルトブルクに帰ることを受け入れる。

第2幕

ヴォルフラムらと共にヴァルトブルク城へと戻ったタンホイザーは、エリーザベトと再会を果たし、お互いに喜び合う。

その日はちょうど歌合戦が開かれる日(「歌の殿堂のアリア」、「大行進曲」)で、課題は「愛の本質について」。ヴォルフラムや他の騎士達が女性に対する奉仕的な愛を歌うのに対し、タンホイザーは自由な愛を主張して観衆の反感を買い、ついにはヴェーヌスを讃える歌を歌いだす(「ヴェーヌス讃歌」)。激怒した騎士たちはタンホイザーを諌め、エリーザベトは領主に彼の罪を悔い改めさせるように願う。我に返ったタンホイザーは自分のしたことを悔やむが、時すでに遅い。領主はタンホイザーを追放処分とし、ローマに巡礼に行き教皇の赦しが得られれば戻ってきてよいと言う。タンホイザーはローマ巡礼に加わりヴァルトブルク城を去っていく。

第3幕

舞台はヴァルトブルク城近くの谷。タンホイザーが旅立ってから月日がたつ。エリーザベトは、タンホイザーが赦しを得て戻ってくるようにと毎日マリア像に祈り続けている。ちょうどローマから巡礼の団体が戻ってくる。エリーザベトはその中にタンホイザーの姿を探すが、彼はいない。ついにエリーザベトは自らの死をもってタンホイザーの赦しを得ようと決意する。見かねたヴォルフラムは説得を試みるが失敗し、彼女は去っていく。(「夕星の歌」)

その場に一人残されたヴォルフラムの前に、ぼろぼろの風体のタンホイザーが現れる。ローマに行ってきたのかと尋ねるヴォルフラムに対し、彼は巡礼の顛末を語りだす。タンホイザーは幾多の苦難を乗り越えてようやくローマに到着し、教皇に赦しを乞うたのだという。しかし教皇は「罪はあまりにも重い」として彼を赦さず、「私の杖が二度と緑に芽吹くことがないのと同じく、お前は永遠に救済されない」と破門を宣告したのだという。絶望のあまり自暴自棄になったタンホイザーは、再びヴェーヌスベルクに戻ろうとしてさまよい、そうしてヴォルフラムに出会ったのだった。

タンホイザーの呼びかけに応じてヴェーヌスベルクが現れ、ヴェーヌスが手招きする。ヴェーヌスへ引き寄せられていくタンホイザーをヴォルフラムは懸命に引きとめる。そこへエリーザベトの葬列が現れる。タンホイザーは我に帰り、異界は消滅する。エリーザベトが自分の命と引き換えにタンホイザーの赦しを神に乞うたことをヴォルフラムが話すと、タンホイザーはエリーザベトの亡骸に寄り添う形で息を引き取る。ちょうどそこへローマからの行列が緑に芽吹く教皇の杖を掲げて到着し、特赦が下りたことを知らせて幕が下りる。